【ご報告】厩戸さんは5月に飯能店を閉店し、山形県に移転されました
肩の力を抜いた、のんびりマクロビカフェ
飯能駅の北口から徒歩3分。路地を入ったらすぐに見えてくるアイビーに彩られた建物の一階にあるのがカフェ「厩戸―UMAYADO―」。店内はコンクリート打ち放しながらも、和の趣を感じるインテリアをゆったりと配することで落ち着いた雰囲気に仕上げており、若者から年配の方まで幅広い人たちがくつろげるようになっている。また、おひとり様でも来店できるよう窓際にカウンター席があるのもうれしいポイント。
提供されるメニューは、マクロビオティックの考えを取り入れたからだにやさしいものばかり。特に酵素玄米をはじめ、豆類や野菜を中心に使う日本の伝統食をベースにした献立で組み立てられた1日20食限定の「週替わりのお膳」は毎日売り切れ必至で、ランチタイムともなればお膳目当ての地元客でにぎわっている。
マクロビオティックの食事というと「肉や魚がないので物足りない」「味は二の次のがまん食」といったイメージがあるけれど、厩戸のメニューはしっかりと美味しく、メインにご飯がすすむ揚げ物をおいていたり、品数をふやしたりすることで食べ終わった後の満足感も味わえる。
自然体で向かい合える食事との出会い
「私自身は普段お肉も食べるし、ベジタリアンというわけではないんです」と、語ってくれたのは厩戸店主、吉川佐喜(きっかわ さき)さん。それでは、マクロビカフェを始めたきっかけは何だったのだろう。
佐喜さんは大学の講義で学んだり、知り合いの農家を手伝ったりと幅広く「食」について学んでいた。そんななか、たまたま長野県にある「穂高養生園」という場所を訪れた。そこは、食事・運動・休養という3つの観点から人間が本来もちあわせている自然治癒力を高めることを目的とした宿泊施設だった。そこで佐喜さんが最も驚いたのがマクロビオティックの食事。マクロビオティックに対して「がまん食」というイメージを持っていたのだが、穂高養生園で出された食事はそんなイメージを吹き飛ばすような仕上がりだった。さらに一皿一皿に「生きている実感」があり、その土地にあるものを食べて生かされているという感覚を初めて味わった。一般的にアレルギーなどをきっかけにマクロビオティックを取り入れる人が多いなか、佐喜さんは「美味しい」をきっかけに出会ったのだ。
そして、佐喜さんはその考え方を徹底的に吸収するため穂高養生園で働くことにした。そこで学んだ集大成が2015年10月にオープンした素直に美味しいと感じられるマクロビオティックが味わえる厩戸なのだ。
理想のライフスタイルを実現するための場所として
お店を始める決心をしたとき、一番の悩みはやはりどの場所でやるかということ。出身地である広島や、情報感度の高い東京という選択肢もあったけれど、佐喜さんは高校時代に住んでいて土地勘のあった飯能を選んだ。その理由の一つは、穂高養生園が大切にしていることの一つ「休養」。ストレスを溜めすぎてしまうと自然治癒力が下がってしまうという考えだ。もちろん、物件との出会いという理由もあったけれど、無理をすることなく自分のペースで生きていきたいという想いから飯能にお店を構えることにした。
今は休日になるとのんびり身体を休めたり、旅行に行ってその土地の食べ物を楽しんだりしているのだそう。「私にとって、マクロビオティックは原点に帰るためのものなんです」と、佐喜さん。自分が食べたいもの、美味しいと思ったものを素直に提供し、お客様にも喜んでもらう。厩戸は、誰もが自然体で楽しむことができる幸せなカフェなのだ。
text & photo : kohei akai