子どもや女性にやさしい、オシャレかわいいカフェ
飯能駅から北にまっすぐのびる広い通りを5分ほど歩くと、鮮やかなスカイブルーをアクセントにしたかわいらしいお店が目にとまる。「Cafe fuWAri」に到着だ。4席のカウンターとテーブル席が3つほどの店内は、明るい陽の光が差しこみ、こじんまりとした空間が心地いい。テーブルのすぐ隣りにはキッズスペースがあり、目の届くところで子どもを遊ばせながらゆっくりとカフェタイムを楽しむことができる。
Cafe fuWAriの代表的なメニューは自家製のパンとキッシュ。どれも女性にうれしい手頃なサイズで、お店に入らなくても外の小窓からテイクアウトができる。最近はオンラインでの販売もはじめた。その他にもワッフルやケーキなどのスイーツやドリンクメニューが季節によって変わるのも魅力的だ。休日に出店している地域のイベントでは、そこでしか味わえないメニューがあるのも楽しみのひとつ。お客様を飽きさせない店主の心意気は、fuWAriファンの心をつかんで離さない。
Cafe fuWAriといえば、見逃せないものが店主自慢のラテアート。目の前でラテアートのパフォーマンスが楽しめるカフェは飯能ではめずらしい。不定期で開かれるラテアートのワークショップはすぐに定員が埋まってしまうほど人気だ。
ふと足が向いて巡りあわせた、このまちで
Cafe fuWAri 店主の七里 建吾(しちり けんご)さんがこの地でカフェをオープンしたのは今から6年前のこと。それまではシステムエンジニアとして埼玉県内の会社に勤めていた。会社員時代は仕事こそ面白かったものの、PCに向かい激務をこなす毎日。休日も少ない。ピークのときには、家族の顔を見る時間さえなかった。「家族との時間を大切にしたい、環境を変えて人と接する仕事がしてみたい」という夢は、いつしか「子ども連れで楽しめるカフェをオープンする」という目標に変わっていった。
会社を辞めて、某有名カフェチェーンで2年ほどスキルを磨きながら独立のための物件を探しつづけた。飯能にたどりついたのは、まさに偶然のことだった。七里さん自身にも家族にも、飯能にゆかりはなかった。まったく馴染みのない飯能の地で、たまたま足を踏み入れた不動産屋から「それなら、ちょうどお隣りが空いてるよ」と言われなければ、今のCafe fuWAruはない。出会いとは、不思議なものだ。
2011年に、Cafe fuWAriをオープン。このとき、お子さんはまだ1歳半。子どもを片手で抱っこしながら、もう片方でコーヒーをドリップする日々を過ごした。今日まで、妻 祥江(よしえ)さんと夫婦二人三脚でお店の営業と子育てを両立しながら駆けぬけてきたのだ。いきなり見知らぬ地に飛びこんで、右も左もわからない2人を助けてくれたのは地元の人びとだったという。飯能の人たちはとても協力的で人情味があるのだと、七里さんは教えてくれた。
家族との時間を大切にする生き方
Cafe fuWAriの店頭には、たまに「明日は家族行事のため臨時でお休みします」というメッセージが貼られることがある。「この仕事は朝が早く夜も遅くて、イベントがあれば休日も出てしまいます。だからこそ、子どもにとって大事なイベントは一緒にいたいんです」と七里さんは言う。会社員時代に会社中心の生活を経験したからこそ、今の生き方を選んだ。
彼のワークスタイルに誰もノーとは言わない。それよりも感心する人のほうが多いかもしれない。人びとは当たり前のようにありのままの彼を受け入れている。Cafe fuWAriが赤ちゃんからお年寄りまで誰にでもあたたかいのは、家族を大切にする店主の生き方がそのまま表れているからなのだ。
text : aya nakazato
photo : kohei akai